2017年12月27日

ひとりをつつしむ

 校舎の中で遊んでいると二人きりの花火をあげている二人の男女がいた。私から見ていると、先生としての立場を振りかざすのが目的なので、特に声をかけるようなことはしない。そしてその二人もそんな私を見て、何もしないことを知っているから特に苦笑いをして会釈する程度で私をすぐに忘れた。きっとそれが最期の景色を見ている私なんだろう。恐らくは誰も知らないことであり、そんな景色を見ても何も感じないから、私が知っていることをすぐに景色の中に比べてしまうのはいつものことなのかもしれない。
 そんなことをどうでもいい、と思いながら、くだらないことを考えている自分に呆れを覚えたのはあながち間違えてないのだろう。それほど、私は疲れているのだろうか。そして、窓ガラスに雲掛かった、針、と軋んだ寒さに私は震えていた。きっと何も知らないのは私だけなんだろうと思うから。私が知っているのはすぐに忘れてしまう思い出と、それだけ大変なんだと思ってしまう心をどこか遠い地平線に見つめている少年の姿になっているからだ。時々思い出すが、一夏の思い出を私は今でも覚えている。一人が嫌なんかじゃなくて、独りを嫌だと言っているようなものなのかもしれない。一つのことを追いかけているうちに何も覚えていないのは私だけなのかもしれない。……。
 いったい何を考えているのだろう。私はよくこんな風に自分の意思と関係なく過去を振り返ることが多々ある。そんなに暇人なのかと言われたらそれまでだが、それでも少しは知っている部分もあるから――何が? 自分の中にいるもう一つの自己の存在に、問いかけてしまう。
「こうなってしまった状況に赦しを降したのは誰ですか?」
 声に出てしまった。呆れてしまい、それに、自分の心が疲れていることを放棄してしまった身体をいつまでもここに置きたくない。それがたとえ私の運命を決めようとしても、いつの間にか自分の心を教えてくれている。嬉しいのか、泣きたいのか、今でもわからないと心は叫んでいる。何も知らない。思い出の中にいる少年の姿を追いかけていると、自分を知っているのがいつでも知っていることなんだと、よくわからないことを考えているのがどこまでも広がる脳内スクリーンに映りこむ。思い出という心に叫び声をあげているのは誰でもない私なんだからと。
 知っているのが自分なんだと。知らないことが他人なんだと。どこまでもひろがる。言葉に変えることが難しくて。
 涙を流してそう悟った。
 黄昏時に浮かび上がる紅の空に鳥を見つめている自分の姿があまりにも哀れなのだと――。

「ひとりをつつしむ」

 そんなとき、私はよく遊んでいた。時々のように思い出を振り返ることが出来なかった公園で二人きりの相談事。ブランコに滑り台。そして砂場。水道水が流れている公園隣のプールにいつも憧憬の気持ちを持つのは子供心に嬉しかった。私はよくその男の子に相談事。
「なんで、こんなことになったんだと。そして私を知っている自分に何かをおしえてもらいたかった」
「何言っているの?」
「いや、学校で劇やることになったから、台本の練習。だから聞いてもらいたかったの。それついでに、なんで、今日、私を避けたの?」
「避けた? いや、周りの子から一緒にいるのやめなよ、って言われてね。僕は嫌だって言ったら、次から遊んであげないからって言われてね。だから、一応今日遊ぶこと知っていたから、ついでにこっちからも聞きたかったから」
 私が涙を流していたことに気付いたのか、私を良く思っていない人たちから守ってくれるのだろうか。それだったら嬉しくて、ついつい約束が裏切りを見せてくれるのではないのかと思ってしまった。何がおかしいのか男の子を護っている自分に嬉しさを覚えた。
 夕焼けが瞳を切り裂いた。綺麗な瞳に映りこむのは私だけの特権なんだと今でも思っている。綺麗な瞳が私だけの特権を覚えている。輝きの中でひとりを、私は煌々と心の中が温まるように、その二つを大切にしてしまうのはどうしてだろう。
「何を?」
「決まっているじゃん。ホントに酷いことしたの?」
 なんだろう。罪悪感というものを当時は知らなかったから私の言葉も理解していない人だからこそ、というか子供ながらに人生のシビアを考えているのだ、と今でも思って笑ってしまう。
「何のことかはわからないけど、誰に何を?」
「良かった。そうだよね。君があんなことしないもんね」
「うーん。じゃあ誤解を解けるように説明してくれる?」
 僕には誤解を解くことなんかできない……。そんなことを宣って男の子は笑って、答えてはくれなかった。私は何があったのかは気にはなったが、みんなに謝ろうと思った。
 そして、二人で遊んでいると、少しずつ暗くなってきた公園。私は公園の中央に立っている時計台を見る。そこには私がお母さんが美味しいご飯を作って待っている刻だった。
「ねぇ」
 男の子は私に気弱い表情を向ける。浅い暗闇の中、私は男の子を見つめるけれど、それでも見てはいけないものを見たような、そんな気がしてならなかった。
「僕、明日から、あの学校からいなくなるんだ」
 嫌だと素直に言えればどれだけよかっただろう。私はすぐに脆い表情で返したかった。だけど、それだけは私は許さなかった。私の黒い感情が素直に言わさせなかった。
「そっか。でも今の時代、いろんな手段で話せるからいいんじゃないかな」
「それもできないから」
「というと?」
 涙をつと、男の子は流している。公園の中で常夜灯が点される。そうして陰った男の子の影が私の瞳に映りこむ。いつものように笑っていたその顔が信じられないほど、脆く危うげなものになっていた。
「楽しかったよ……。さよなら」
 涙を流しながら。男の子が言ったことを理解するまでに私はそこに立ち尽くし、理解したころには男の子の姿はなかった。
 私は何をしたんだろう。そう言った思いでいっぱいだった。そしてそれが私の全てを嫌な予感を持つようになった、始まりだった。いつものように、いつものように、と。
 私はただ、公園で泣いていた。もうずっと会えないのだと思ってしまったから。そしてこれからもそうした哀しみの中で暮らしていく生活に、子供心に悔しかった。それが続くのを必死に耐えることなんて嫌だったから。私は、ただ、公園で、泣いていた。そして。
 菫色に染まっている空。ただ見つめているのは月の光だけ。私はいつまでそこにいたのだろう。わからないけれど、心のどこかで男の子が帰ってくることを望んでいたのかもしれない。だけど、現実は非情。私は願うだけで、神は却下するだけで。
 一人で寂しく帰っていたことを今でも思い出せるのだ。

 時に 涙を流す
 人に 涙を流す
 そして
 人は 涙を流す
 時は 涙を流す

 学校の中でいろんな人と遊んでいることって何だろうと思ったりした。きっとこれからもそんなことを続けていくのだろうと考えていた。そして一つ思い出したことがある。それは。
「私ね、小さい頃。思い出を記憶の中に封印を施したことがあってね。それを大切に、今でも前を向いて歩いていけることがあるんだ。誰にでもそういうことってあるよね」
「何が言いたいのかさっぱりわかりません」
「加奈。そんなこと言わないで。今から最中あげるから」
「えぇ~~。ほんとうにぃ? じゃあ今さっきのコトバ、チョーわかるぅ!」
「どっかに行ってしまえ!」
「をい」
 とりあえず、西村加奈というわけのわからないギャルらしい人間にこんなことを言ってしまった私が馬鹿だったと後悔してしまった。ただ、気を抜く会話をしたいなと思ったら、何故かこのギャルらしい人と話したくなってしまうのが私の癖なんだと思う。いつものように、世界のことを考えている私を、今も涙を流すのは大切なんだろうと思ってしまったのだから。
 校舎の中で、二人で教室の机に座って、黄昏時の陽射しを浴びながら、二人で黒板を見つめながら話す。顔をときに見合うが、何故か、お互い苦笑してしまう。何故かはわからないけれど、それでもなんだか、幸せだと思える、この瞬間をやっぱり大切にしていきたい。そんなことを思ってしまう。
 それだけ、お互いを大切にしているのだろうか。それだけ、この世界について私は考えていたのだろうか。
「わからないね。ヨッシーがどんなことを考えているのかは知らないけどさ」
 吉本という私の苗字を渾名にいじっていつものように私に喋ってくる。なにかのアニメのキャラクターなのだろうか、加奈の指にはキーホルダーがかけられている。夕焼け空に翳す感じで少し持ち上げる。それが綺麗で私の瞳はそれが映る。いつの間にか、そして私が疲れている時に、涙を流すことを加奈に伝える。それだけで私は変われるような気がする。
 なぜか、そんなことを考えてしまう。いつものように、そして何度も答えを変える。私が知っていることを加奈に教える。加奈が知っていることを私に教える。それだけは親友という肩書をお互いに持っている。それだけ、大切なんだと。しつこいながら、想ってしまうものだ。
「ねぇ、ヨッシ。私、気が付いたんだけどさ」
「どしたん」
「今日、誰かに告白されたとしたら、私、ヨッシと離れないといけないのかな」
「いや、関係ないでしょ。なんで、私が離れないといけないのよ」
「だよね。でも、そんなことを考えてしまうのはなんでだと思う?」
「うーん。とりあえず、加奈が疲れているんじゃないのかなって思う」
「そうだよねぇーー。そうなんだよね。私は私なりの人生を歩んでいく。その中に、自分を見つけることが大事なんだって思うんだ」
「すごいこと考えているね。だけど、それはそれでいいんじゃない? 普通に学校に行って、通って、卒業して、仕事先見つけて、働いて、定年を迎えて。そんな人生も悪くないと思うけど」
「そっか。でも私の頭の悪さじゃだめじゃん?」
「がんばれ!」
「そこはカンペ作ってあげる! とかじゃないの?」
「そんなに後ろ向きな努力は認めん!」
「誰よ?」
「でもこんな進学校に来れているんだからそんなに落ち込むことはないんじゃない?」
「まぁ、そうなんだけどね。そうだね。じゃあ、今日は帰ろっか」
「なんて不毛な会話だったなぁと」
 ん? と加奈が黒板から眼を背ける。私は何かがあったのかな、とは思ったが、加奈のことだから、すぐに解決できるだろうなって思う。加奈の破天荒に明るい性格ならどんなことがあっても難事を探偵よろしく、通過儀礼のように。
 私は特に加奈を見ることなく、すぐにカバンを取る。そしてそのまま、加奈に手を振る。
「先に帰るね。彼氏といることを邪魔するのも悪いでしょ」
「お気持ち、アリガト」
 加奈はやっぱり笑った。
 私は教室のドアを開いて廊下に出る。後ろ手にドアを閉める。
「普通、か」
 私が自分で言ったことを振り返る。私が何を求めて人生を歩んでいるのか。私がどういったことを考えているのかを知りたくて、世界のことを考えている。まるで、矛盾。いつものような、パラドックスを抱えて、私は渡り廊下を歩いていく。
 その背中姿に誰も声をかけない。誰もいないからか、それとも、いつものように夏を過ごしていく。
「空でも見ながらお茶を飲もう」
 なんとなく、私は今でも思い出の中で笑っている人を見つめてしまう。いつものように、いつものように。私を助けてくれたのは、あの人だと知っているから。空を見つめる。そこには夕暮れ時に映る空独特の色、雀色がもう少しで消えていく。
 そして太陽に沿って、光が瞬く。そこから何かが私の瞳に突き刺す。そしてイメージ化される。
 そのイメージは私のもともとあったものかはわからないけれど、何故か、天使の姿が映りこんだ。ゲームなんて全然やっていないから、その天使の姿も、まるで白衣を着て、飛んでいる医者の如く。
 ただ、もっと具体的に見るのなら、空の色に映されている人に羽根がついて、人の等身大の姿で、大きい鎌を持っている、どこかで見た幻想的な絵にありそうな、そんな姿だった。私が見つめているのを感じたのか、その姿がイメージの中で大きくなっていく。
 天使が私を見つめる。とても綺麗な姿だった。だから想ってしまった。
「加奈と一緒に暮らせるユートピアに連れて行ってくれませんか?」
 私は少しだけ、笑ってしまった。歩く足はそのまま校舎を出て行った。
 少しだけ気付いた。私が世界のことを考えているのは、もしかして、私を導いてくれる在る者を探しているのかもしれないと。
「少しは世界の研究を続けているんだから。やっぱり、私は」
 天使の姿が消えることはない。そして私はそれに希望を灯した。それと一緒に、加奈が黄金の鎌を持って、その天使の隣に佇んでいる。そんなイメージが消えることはなかった。
 空が橙い。もうすぐ夜の帳が落ちる。私は何でもないように首を振って、すぐにそのイメージを絵に描こう。
 そう思ったのだ。

 時に 人を見つめている
 時は 人が見つめているから
 神も
 人に 時が見つめているから
 人は 時を見つめているから

 寝ていた。時々、夢から覚めたような、そんな感覚。いつしか知ってしまった、絶望の中にあった、一つの希望。私の心を占めていた、人の欠片。いつまでも傍にいてほしい、そんな。
 私のことを覚えている人はいるのだろうか。そんなことを終わってしまったことと考えているのはなぜだろう。終わりたくないのに。
 部屋の中で焚いている蝋燭の火がふっと風に吹かれ消えた。陽炎が見えた。そして夜空を見上げた。
 いつの間に夜になっていたのだろう。まだ消えゆく光を追っている鳥の姿が見つかる。私は何をしたかったのだろうと、自分に言い聞かせるのが私だけのことを知っている。今という時の中で私は何を求めているのだろう。知っていることから導くことが出来ないでいる自分が悔しい。どうして私は。
 だけど、夜空を眺めていると、そんな感傷めいた言葉もいつの間にか月の中に隠れている一人の少年の姿が癒してくれる。私を慰めてくれる。
 嬉しくて、嬉しいのかな。
 怒りたくなくて、怒りたいのかな。
 まだわからない感情の居場所を探しているのだろうから、それでもいいやと、思う自分もいる。それが私なのだろうと。
 思案事を知っているのが私なんだろうと思ってしまうのだから、相変わらず、知らないのは私だけだということに恥ずかしさを覚えることもやはりあるのだろう。きっと、きっと。
 鳥の鳴き声が聞こえる。いつも鳴いている、そんな風に私はできるのだろうか。私を教えてくれるのは誰なのだろうか、と。あの時、この時。知っているのはそれだけなのだろうかと知っている。きっと、きっと。
 喜んで鳴いているのは鳥だけではなく、私なのかもしれない。だって気付いたから。
 空の裏にいる天使さんにこれから旅立ちの合図を送って。にっこり笑う。嬉しいから、怒りたいから。自分に。そして他人に。
 知らないのはどこにいるの? 知らない人はどこにいるの? 知っている人を探しているのはいつものこと。夜空に舞うのは一人の影。一つの影。個物の影。知らず知らずに。
 私は夜空から視線を外す。見ているのは斜光に輝く机の周りに転がっている鉛筆。何も書かないけど。それでもたくさんのことを知ってもらいたいから。そして幾多の紙。何枚もあるのは気のせいではない。綺麗なことを書いていきたいとたくさん用意した。椅子が回る。くるくる私は回って部屋を見渡す。
 クローゼット、ベッド、紺色の空。一つ、二つ、三つ。
 この世界に何を残せばいいの?
 そんな疑問がつと頭に残るが、私は特に気にすることもなく、そのまま、夜空をまた見上げる。椅子が回っているのが楽しくて。
 こんな夜中に誰も話すことはないのだと、気が付いたから。友達のことを考えても仕方ない。
 だけど。
 一つの疑問が繰り返されてた幾星霜の言葉だらけのことを教えてほしいと。一介の女性がわかって良いものかはわからない。ただ、こうしてのんびりと時間を過ごすのもまたそれはそれで楽しい。嬉しいってこういうことを言うのだろうか。
 何もない。日常がただ進んでいる。加奈と遊んだ記憶はいつだったか。どうしてか、そんなことを考えてしまう。教えられたのは自分だけの世界のこと。面白いことをしてみようとも思ったりする。ただ、楽しいことなのかもわからないけれど。
「もういいや。今日は寝よう」
 考えるだけのことを知っているのなら、思うだけのことも知っている。教えてほしいのは、遠い昔にいた男の子を誰が連れ去ったのか。でも。
 私の意識は微睡みの中に消えていく。ただ、寝ているだけの間に一つのことを教えてくれた、あの天使の絵が頭から焼き付き離れないのは今でも当たり前のこととなっている。それが、嬉しいのか、やはり、怒りたいのか。
 わからない、わからない、と心に言い聞かせる。そしてこれからも一緒に。
   を想っているのか。
 そこの言葉だけが何もわからない。だけど。
 それを知るような人生を歩いていくんだと、何故かそう想ってしまった。

 天使と悪魔
 人と神
 人外の者を知る者よ
 亜種を求め
 異種を捨てる

 ヨッシが最近おかしい。
 あたいのことを知っているのはヨッシぐらい。あたいのことを知っている。それが嬉しいから友達を続けている。でもそれで友達じゃなかったら何だろうと考えちゃう。
「バスの中でも、気持ち悪い人がいるねぇ」
 あたいの背後に立って誰かがそんなことを言う。振り返れば、そこに一人の少年が立っている。
「どうしたん、坊や」
「ん? お姉さん、香水がキツイよ。どんな香りかは知らないけど」
「ローズマリー。違ったっけ」
「うん、それでいいんだけど。とりあえず、僕のことを覚えている?」
「はっ?」
 バスの中であたいは立ち尽くす。外の町中を流れていく景色を見ていたかったが、少年がそれを邪魔することに不機嫌さが増す。あたいのことを知っているのは学校の生徒とセンコウぐらいだろう。でも学徒という言葉がどうしてか浮かんだ。あたいは、無視することに決めた。
「そっか、無視するんだ。でもいいよ。どっちにしろ、運命の歯車は回り始めたから」
 何が言いたいかね。あたいは胸中思う。そしてその少年は次の停留所に降りて行った。
 考えを戻す。ヨッシが最近おかしい。
 何を考えているのかは出会った当初からわからなかったけど、いつも笑ってばっかり。だから友達を続けているんだろう、と自分に言い聞かせる。あたいは教えてもらったときに性格の良さを知った。それだけ、楽しそうに将来を語ってくれたからあたいは嬉しかった。時々見せてくれた、はにかんだ笑顔が好きだ。
 今でも思い出す。あたいが好きなのはその笑顔なんだと、何度も思ったものだ。
「なんで、あんなことになったんだろ」
 ヨッシが、気付いたら目の前から消えたらどうしようと。思ってしまったものは仕方ない。ただ。
 どうしてもやらないことがある。
 それは。
「あたいが、この世界の人じゃないことを言ってしまったら、ヨッシ、怒るかな」
 それだけが、怖いんだ。
 バスは過ぎていく。町並みが少しずつ田舎に変わっていく。森が多くなり、林道の道がいくつもあるのは、どこか異界の入り口のように見えているのはきっと気のせいじゃないのだ。
 神たちはあたいに期待をしている。きっとあたいのことを今でも待っている人もいる、と。笑っているだけで、どうしてこんなにつらいのだろう。わからないけれど、ヨッシを裏切る形となってしまうかもしれない。でも、それでもあたいが目指す境地にヨッシはいらない。ずっと一人で孤独に。あたいはヨッシを使って幸せをつかみたい。
 たとえ、それがディストピアの夢だとしても。
 でも、今は。今だけは。
「ヨッシと遊びたい。ただそれだけ」

 望みを叶えたくて
 望郷の想いを果たしたくて
 泣きたいときに
 望みを叶え
 故郷に想いを捧げる

 今日の想いを日記帳に書く。何をしてもいないのだけれど、いつものように遊んでいたのは何ら変わりようのないものなのかもしれない。独り寂しく帰り道を歩いた。そしてこんなにも大切な出来事があるだなんて。
「一緒に遊んでくれたあの人は、今どこにいるのかな」
 加奈が最近、私に少しだけ冷めているような気がする。だけど、前にもそんなことは何度かあった。だからあまり気にはしていないのだけど。少し、私のことを教えてほしかった。
 校舎の中で過ごす夜も悪くない。私は何を以てここにいるのかなと。いつものように遊んでいたかったのは当たり前な生活のためなのかもしれない。いずれにしろ、ここで私は今日を過ごすのは変わらないのだ。
 家の中にいたら親がうるさい。一人で過ごしたいときはこうして校舎の中でよく、過ごしていた。今でもそれは変わらない。
 少しだけ、寂しいと感じるけれど。私の心はいつも明るい。
「だって、加奈がいるから。だれにでも呟く必要なんてないんだけどね」
 そこに加奈が彼氏と一緒に遊んでいる光景が現れた錯覚を覚えた。いつものように遊んでいる二人の幸せ。私は加奈の為に何ができるのだろうと考えてしまうけれど。それでも、それだけ大切なんだと、私は友達を大切にしているのだと、そんなことを思ってしまう。
 いつも、私は加奈とおしゃべりしてしまう。学校の中で朝も昼も夕も。ここがどこか別世界なんではないかと思ってしまうぐらいに本来の学校という認識が壊れるほどに。話すことが楽しくて。この刻が永遠に続けばいいのにと何度も思った。
 そしてそれが少しずつ現実になっていく、そんな不思議な感覚が身体の中に刻まれだしているのは最近になって気付いたことだ。私のことを知っている、友達もいるけれど、私の心を捕まえているのは加奈だけ。それがやっぱり何度考えても嬉しいのだ。
 少しずつ校舎に光射する淡いもの。逢魔時の日刻に近づいている。廊下に立って空を見上げれば。
 紅い空に架かる雲々に虹が掛かって、辺りを彩りを飾る。綺麗な光はグラウンドを輝かせる。その照り返しで校舎が橙に染まりゆく――。
 一人で見つめた景色を脳内の中に刻み込む。それが最期の意識だった頃に、私はどこにいたのだろう。私の心を捕まえてくれたのは誰だったかなと思い出していたあの頃。私は今も男の子の影を追いかけているのだろうか。私を知っているのは加奈だけ。そして幼少期の私を知っているのはあの男の子だけ。
 校舎の中には先生ぐらいだろうか。私は廊下を静かに歩く、それを咎められないように。
 私の心に何かが芽生えた。
「なんだろう、この気持ち……」
 私は何もしてないけれど、いつものように涙を流していたのが、どうしてか、今は止まらない。そして答えを追い求めるかのように頭は何かを考えている。なんだろう、なんだろう。
 廊下に水が流れている。特に色はないが、私の心を反射させて、姿を見つけさせる。綺麗な姿を私は見ていた。綺麗な姿が私を見ていた。鏡のような、それとも、湖のような。よくわからない心がいつもここで、楽しんでいたと、心の中で爆ぜる。
 想いが重なる。人はどうしてこんなことをしてしまっているのか、わからないと。そこにいる私も笑っている。私はいつものように、遊んでいる。校舎の中で自由に動き回っている。楽しく楽しく。哀しく悲しく、悲哀に。
 そして水の量が増えていく。嵩を見ていると、ここに湖でも作るのかと。……。
「ん?」
 私は気付く。ここから少しだけまっすぐ行ったところに視聴覚室がある。そこに一人の影がよぎる。
「誰だろう。先生かな、それか警備員さんか。でも、どうしてこんなところに水が垂れ流されているんだろう」
 私は不思議がりながらも、視聴覚室まで行きたかったが、今は非常に疲れている。
「今は、戻ろう。身体を休めないと」
 私は自分の教室の中に野外キットを置いてあるから、そこまで戻ることにする。
 水の増える量は段々と。ただ、私の想いも段々と。おもしろおかしく。少しずつ未来も見え始める。
「何かが始まっている? それとも、私が信じていた、あの出来事?」
 あの出来事は、もう忘れ去られたのに。だけど、一枚の写真が心に残っている。一人で幸せそうに映っている、あいつの顔。
「拓。霧島拓。あいつ、今、どこにいるんだろう」
 あいつと関わった頃にはちゃめちゃに楽しんで、そして別れ際の時に一枚の写真を私に渡してくれた。そしてその顔が頭の中で明滅する。もしかして。
「拓が、帰ってくるのかな」
 ふと、そんなことを思ってしまった。私はここで、拓を待っているわけじゃないけど。それでも。
「好きだった気持ちは変わらないのかな。その感情も忘れたのに。どうして、今になって?」
 私は廊下を歩く。そして教室の中に入って、そのことを考えながら、窓際の椅子に座って、空をまた、見上げた。

 一人を懐かしんで
 笑ってもいいんだよと
 涙を見せることなんて
 それが愉しいから
 一人を懐かしむ

 家に帰って、ご飯を食べている私がいた。綺麗な姿で何もできないだけの生活からようやく脱出できたのは今でも楽しい思い出となっている。嬉しくて嬉しくて一人暮らしの淋しさを感じていた。
 何もしないでご飯を食べているのは何のことかはわからない。きっと無駄な時間が過ぎているのだろう、とそんなことに気が付いて、外を見る。
 まだ、菫色の色にはなっていない。綺麗な色合いが流れている感じで、鳥は飛んでいく。美しい姿を見せて黄金色に染まってゆく。私の心は未だ部屋の中。嫌いなことなんてない。大好きな世界のことを考えているのが今でも嬉しくて。そして悲しんで。私はクローゼットを見遣って、いつものように、涙を流す。
 誰のためでもない。自分のためでもない。それこそ、意味のない涙。桜色の季節に映した光景を写真に写したのが嬉しかったのに。
「はぁ、この炒飯がなんであの世界ではないのだろう」
 くだらない。実に。ホントにくだらないことを今でも失ってしまったのだろうか。だけど、それでいい。いつものように過ごせば、また未来が当たり前かのように到来してくると思うから。何をしても意味のないことだと気づいたのは今か、昔か。時の中で人は何を考えているのかがわからない。そして何度も変わらない答えを知っているのが今でも主観的に気付くのが遅くて。
 私のことなんて知っている人がどこにいるのか、加奈だけだろうか。今の私に何をすればいいのかがわからない。
 そんなことを食べながら考えていると、ふと気づく。
「あれ? 外の景色が明滅している……。何かあったのかな」
 ご飯をよそって、そのまま椅子に座る。綺麗な扉に映っている誰かの姿に不気味さを感じる。美しい姿とは程遠い、まるで骸骨のような不気味さを誘っている、そんな印象が私の意味不明な感じ方だった。
 綺麗な。華麗な。そして麗しく。そんな風に考えたことなんて、女のくせにわからなかった。きっと今でもそんなことを感じてしまうのが私だけの特権なんなんだろうか。
 そんなことをよそに空が菫色から徐々に橙色に輝いていく。まるで時が逆行しているかのように、空の色が変わっていく。綺麗な色のバラエティが私には美しく感じて、私は嬉しくなって、やっぱり悲しくなる。悲哀の感情を感じるのはなぜだろうと、思い出に耽っているのが私の心に残っていた。それを掬う。
 一緒に考えていたのが隣の住民の人と同じだったらしい。ベランダから出てきて、何かを大声で言っていた。私は何も知らなかったと大声で叫んでいる。何かが変わっている、そんな気がしてきた。
 砂漠のイメージがなぜか浮かぶ。そこに大量の雨が降る。そして夏日に美しい世界を。世界を?
「世界が変わった?」
 何のことだろう。なんでこんなイメージが湧くのだろう。そして何が私を追い詰めているのだろう。わからない。わからないけれど、綺麗な星空が見えなくなって、もう数刻経ったのだろう。姿に見惚れていると、私はふと頭によぎる。
 ――加奈。
 加奈のことを今でも知っているのが嬉しくて。加奈のことを忘れたことが哀しくて。今でも思ってしまうのは自分で、昔から想っていたのに加奈のことを。いつものように姿をバラバラにして、剣を持つイメージ。
「嬉しくて、何をしているのかと。今の私には何もわからない。だけど」
 隣の住人さんが何か言っているが私は特に気にすることなく、ご飯を食べ始める。楽しいことを思い出すのもまたいいのかな。
 何も知らずに世界のことを教えてほしくて、一人でせっかくのこの空間にいる何かを追い出さないといけないのだと、すぐに気付くのだ。私は何も知らないでいいと。何かを教えてほしくなって、それがまた、私らしくて、すぐに。それでも
「世界が変わるのなら、私はまた、あの人と過ごすのが楽しいのだろうと思う。だけど、加奈と一緒にいたいと思う心もまだあるのです。世界は私を見つめていますか? 時はこれから私を無視しますか? 一人で過ごしたこの時をあなたは知らないのでしょう? だからその剣を私の心に突き刺すのが今は正解かもしれませんね。そして何度も思った答えを今ここではっきりさせてくださいよ」
 何を言っているのだろう。何を叫んでいるのだろう。何を思いの丈にしているのだろう。だけど続く言葉は止まらない。
「世界の中で私の必要最低限を存在意義としていますか? なにも出来ない世界のことを私が喜ぶと思いましたか? だけど。だけど。喜ぶとしたら、加奈がいてくれたら、喜びますよ」
 あれ? 涙を流している。私、涙を流している。そして。

 草原が見渡せる、小屋の中に私はいた。

「あれ?」
 手に持っていたお茶碗と箸はなくて代わりに小さなサバイバルナイフを持って、小屋の中で椅子に座っていた。
「ここは?」
 記憶に封印が掛かったのだろうか。思い出すことが出来ない。なにも出来ないのが本音だが、それだけでも今は何もしていないのが意味不明なことに少しずつ、教えてくれる。
「私の前世ってこんな陰陽道のような……。関係ないか。でも、ここは?」
 ある記憶はご飯をもそもそと食べていた私のこと。そしてその間に何かを呟いていた自分。それだけ。
「これから、どうすれば?」
 私は途方に暮れるが、幸い、この小屋には誰も来ない、ような気がする。そして小屋の扉に誰かがいたのか開きっぱなしになっていた。楽しいことを考えたけど、それでも。
 とにかく、何も考えず、空を見上げていた。

 喜びと 歓びと
 悲しみと 哀しみと
 思い出を思い出したくて
 笑っていいのかと 思って
 泣いていいのかと 想って

「はぁ。思い出と隣り合わせなんだな。あいつ」
 何が、と返答したかったけど。俺は特に気にすることなく、加奈の手を引いて、芳、吉野芳の家に向かう。
「ねぇ、拓。あいつさ、どうして、こんな暗い中で生活していたんだろうね」
 わかりません、とテキトーに相槌を返す。綺麗事が好きな、加奈の考えはよくわからない。いつもそうして、答えをはぐらしていると頭を叩いてくる加奈だが、今はないようだ。
 暗い道路を電柱越しに光る明かりを目安としていつものように家を見ていく。歩くだけでもこの夏になっていると暑い。いつものことだが。
 蝶々が飛んでいて、電柱にたかる虫もみんな鳴き声を鳴らしている。道路の壁には落書きが描かれている。あまり嬉しくないが、ここらは危ない奴がいるっていうことがわかってしまう。どうしてもそんなことを考えてしまうのだ。元々、芳はそんな質で、一緒に嬉しいことをするのがいつものことだった。アスファルトに残された暑さがまだ、夜だというのに冷えていない。残された暑さが芳を彷彿させていく。いつも、そうだった。芳はそんな奴だった。
 暑苦しい女性の割には小奇麗な服なんかを着ていて、俺にはわからない、有名なメーカーの物だとよく自慢していた。そして。「美しさは我慢から産まれるのよ」と自信を持って雨の中で土砂降りの中で傘を差すのが嬉しそうだった。さすがに濡れるのは道徳上、あまりよろしくないのだと知っていたから、さすがにどこでも夜の中では濡れるが昼間は濡れることがなかった。
 どうでもいい。とにかく、芳と加奈と俺、拓、の関係性が今の俺には嬉しい。そして、さっきから、よくわからないことを考えていた加奈が俺の頭を叩く。
「聞いてる?! あたいの真剣な望みを叶えるスカイツリーって言ってるでしょ?」
「意味わからんわ。何が言いたい」
「あたいは言葉を言いたいのよ」
「喧嘩売ってんの?」
「私はむしろ買う側だからそんなシステマチックなものは売りません」痛い。
 頭を代わりに叩いてやる。
「どうだ。これが俺の喧嘩だぜ?」
「意味わからん」
「……虚しいって知ってる?」
「……うん」
 なんか夜の暗い中で、電燈だけが明るくて、加奈と俺は暗かった。とにかく、意味の分からないことが続いていることが原因だと気づくのに特に時は経たなかった。
「それで加奈」
「どした?」
「あれだよな? この暗い中、部屋に電気が点いていないから、わからんけど、芳の家は」
「うーん。そうだと思うけど、どして?」
「いつもなら、ここらに来たら足音に気付いてやってくるんじゃないのかなって思ってな」
「一階にいるんじゃない? でも、ヨッシのことを」
「さっきはなんで、あいつって言っていたんだ?」
「知らない。それより、なんか、ここら辺の空気おかしくない?」
「空気?」
 いきなり、よくわからない単語が出てくるのは加奈のいつも通りなんだが、俺はよくわからず、いつものように返答する。
「わからん。でも、暗さが尋常ないほど暗いことには気付いている」
「だよね。そんな感じで、人の気配がしないってこと。私魔法使いだから」
「なんだ、その厨二病は」
「拓には言っておくけど、この世には常世と現世があって、その二つを行き来する人が魔法使いなんだよね」
「そんなゲーム設定は知らん」
「まぁ、わからないと思うけど、証拠を出すよ」
 そして加奈は綺麗な手を組んで膨らませるように手を丸める。そして産まれたのが。
「ほら」
 鍵だった。どこの鍵かは知らないが少し驚く。
「それどうしたんだ?」
「今、あたいが作ったんだよ。魔法で」
「ふぅん。どんなトリックなんだろうな」
「まぁいいよ。それより着いたね」
 そんな馬鹿げた会話をしていると、加奈の二階建てでこじんまりとした家に着いた。周りの民家のどこも、綺麗な夜空を見上げるため窓側から窓を開けて人がいた。俺はそんな光景を見ているとふと、思うことがあった。
 特に昔から思ったことがあるわけではないが、綺麗な空を見ることが、芳の癖だったなと。夜空に映える景色が綺麗で夜の中散歩するのが好きだったと。空にはいろいろ名前がある。
 うそうそ時、黄昏時、逢魔時、誰彼時――。
 そんなことを自慢しながら俺の隣を歩いていた頃が懐かしく感じたのだ。俺はなんでそんな奴と付き合い始めたのかはわからないが、少なからず、好きという感情は全くと言っていいほどないのだ。その代わり、楽しい相手だなと、楽しむために付き合い始めたのだ。そしてそんな予感は当たって、友達も増えた。
 昔から、人を避ける性分だったから俺はずっと心を分かち合える人を探していたのだろう。俺は懐かしむことで思い出を振り返る。嬉しくて、幻の姿をいつも追いかけていた、加奈と出会ったのはその頃だろうか。
 芳の親友と聞いていた、加奈。その苗字は誰にも言っていないし、何故か先生すらもその名前を知らないという。ただ、何かを隠し持っていると俺は疑惑を持ってしまっているが、いつものように軽い調子、そして少しの緊張と、「友達になってくれるか?」と話してみると、とにかくテンションが高いことにびっくりしてしまったのだ。いつも笑う。いつも楽しい。いつも憂い顔。いつも笑顔。
 この二人と付き合っていると、彼氏彼女の関係を一生懸命に求める他の奴らが馬鹿らしくなって付き合うのを止めた。でも、そんな俺に気付いて、何人かは俺と同じようなことをしている、俺にとっては男でまだ、骨のあるやつだなと、何故か、上から目線でそんなことを思った。
 そして気付けば、クラスメイトも俺から離れていって、そして卒業式。もう、俺はこの二人からも別れるんだと哀しみを抱いて、二人に「今までありがとう」と素直に感謝の言葉を言うと、芳は苦笑し、加奈なんて爆笑した。「あんたと別れるわけないじゃん」。
「どうしたの? 難しい顔してるけど」
「人が思い出に耽っているのを邪魔するのは如何なものだと思いますが」
「そうなんだ。まぁ、そんなことはどうでもいいとして」
「どうでもいいのかよ」
「この鍵で、入ってみたら、ヨッシ怒るかな?」
「いいんじゃないか?」
 まぁ、さすがにそんなことをさせるわけにはいかないから、玄関口を開けて、玄関に入る。そして扉を叩く。
「かおるーー。いるかぁ?!」
「大声はあんまりよくないと思うけど」
 そんな声が聞こえたが無視に限る。
「いないんなら、入るぞぉ。さ、加奈入るか」
「あんたがそんなに薄情な奴だとは知らなかったよ」
 そんな声もまたもや無視に限る。
 俺はゆっくり赤銅色の扉をこんこんと叩く。そして反応がないがそれに構わず扉の把手に手をかける。そして開く。
「うぅん。誰?」
 そこには誰もいなかった。声だけが反響して家の中に響き渡る。まるでテノール歌手のような声。それがずっと響く。
「どうすればいいんだ、加奈」
「とりあえず、今日は芳の家で休もうよ」
「そうだな」
 声は聴こえなくなったが、他は何も変わってはいなかった。
 
 涙を流している
 水をなめている
 人をそんな風に考えると
 循環している水と
 循環している記憶

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2017年11月28日

言葉の秘密のように

 人々の間に涙を数えている人がいるのだと、いつ知ったのだろう。私としてはそんなことを思い出すのも面倒くさく感じていた頃も思い出す。きっと私のことを覚えている人なんていないんだろうね問う感情と共に。
 いつも笑ってくれている人のことを思い出すと、いつの間にか私の表情も笑っている。同じことだ。私は私であり、彼女は彼女である。それだけ当たり前なことなのだろう。ずっと思い出したい記憶は底にあり、どこにでもいるような人々を隠し切れない記憶を持っていることにも疲れを覚え始めたのはいつの頃だろう。わからないけれど、きっと。
 どこにでも笑っているのはあなただけよ。
 どこともなく、聞こえた声に、ハッと意識を思い出す。そして、私は笑ってみる。そうしたら笑っているのが嬉しくて、こんなにも幸せな気分になるんだなって思った。私という存在に意味を見出したのだから。強く存在を願い、また、笑っていく人生というものが時々良いものかもしれないと、思ってしまった。過去にさよならを、未来にありがとうを。それが私の道。辿ることが誰にでもできない、自分だけの道を、私は知ってしまったのだ。
 美しいものだけを思い出していたら、こんなにも無常なことがあったんだねって。
 綺麗なものだけを思い出していたら、こんなにも非情なことがあったんだねって。
 笑っていられれば、そんなものは消えていく。嬉しくて、哀しくて。涙を見せることで私を創ったのだろう。あの人は今どこに?
「桜。こっちよ」
 私の隣にいた人から声をかけられる。私の名前を呼ぶ人は彼女しかいない。
「良子。私は探しに出掛けるよ。だけど、それは良子と共に行く旅と思ってもいいのかなってね」
 割烹着を着て料理をしている良子は私の顔を見つめている。良子の隣で包丁で野菜を切り刻む。
「そっか。でも私は長旅に行きたくないわ。だって、疲れるんだもの。きっと、何度も同じことを繰り返すんでしょうね。無駄なことも有益なことも。だけど」
 ボウルの中に野菜を入れる。それを良子は鍋の中に入れる。そのまま煮込む。味噌の匂いが私の鼻をくすぐる。良い匂いだ。
「私は桜のような性格にはなれないから。きっと何度も苦しい旅になるのが嫌なのよ。すぐに屈託なく笑うあなたを見ていると、過去を思い出すのよね。昨日の様な、今日の様な。その思い出は思い出していいのかしら」
「ダメよ。そんなこと言って、すぐに私の嫌いな具材を入れようとするのは」
「あ、バレた?」
 良子はこちらを向いて、舌を出してからから笑う。その仕草が苛立ち、だけど可愛らしいところでもあるのが憎めないところだ。これから、どんな旅が始まるのかがわからない。だけど、こうやって、一緒に居られるだけでもいいのに、私はすぐに良子を馬鹿にしてしまう。そして嫌われてしまうのかと、何度か思った。そしてそのことも言ってしまったこともあった。が。
 そんなのどうでもいいじゃない。笑おうよ。
 と、返された。私は少し固まったが、その後、何がわかったのかはご想像にお任せしたい。私は笑ってしまったのか泣いてしまったのかも。
 とにかく夜半の頃合いになっている事実を考えてみる。少しでも嫌になっていれば、私は料理の手を休めて、ベランダにて踊るだろう。ダンサーとして職業を全うしていたのは過去だけど。それでも一緒に踊ってくれた、記憶の顔に薄らとモザイクの様なものがかさんでいるのは私のせいだろうか。その人は一緒に踊ってくれた。私を一人の人間として見つめてくれた、幸せの一時。踊っていた、楽しい毎日。そんな日々もいずれは終わるとわかっていても楽しくて、踊った。
 夜食の頃合いにこんなことを考えているのは暇人だということだろうか。それでも良かった。そしてその幸せを享受した、そんなとき。今、ここで隣に居てくれる人が同じ人だったら、と思わなくもない。でもその後にその人に良子を紹介してもらった時はびっくりしたのだ。顔が美麗だということに。女性の私でもドギマギしてしまうのがおかしかった。
 鼻梁が少し高いところが特徴と言ったらわかりやすいだろうか。瞳も大きめで、眉を自然に剃っていた。そして、何より、髪が朱色で染まっている、外国人の血でも入っているのではないか、ほどの朱い毛は私の心を奪い去っていった。
 今は割烹着を着ているのだが、普段の服を着ているのを見ていると私だけが浮くのではないのか? と懸念があってしまう、そんな姿勢や立ち回りなどの動きとそれに合った服が見ていて清々しいぐらいだ。ただのシャツとジーパンでも青年だと思わさせ、コートを着させれば恐ろしいほど、可愛く見える、そんなもの。私はとにかく、一緒にいて、幸せを別の意味で感じている。
 ただ、性格がのんびり屋さんなのであまり、疎いところは笑わせてもらっている。面白いように、鈍感なのだ。
 時々、一緒に具材を買いに行くのだが、やはり先ほど言わせてもらった特徴なもんだから、声をかけられるのだ。言葉を変えれば、ナンパされるのだが。
「あんた、結構かわいいじゃん。一緒にお茶でも飲まない?」
 みたいなことを言われたら、必ず、
「えへへ。可愛いのね、私。でもあなたも可愛いじゃない。私とどれだけ可愛いかの勝負でもしない?」
 と、「可愛い」の連呼なのだ。というか男性に可愛いってなに? と問うたことは今の私には怖くて聞けない。というか、違う世界に入ってしまってないのか? と思わなくもないと、何度も思った。
 そして、その男性はかっこいいといってくれないことに無常さに気付くのか、そのまま、笑いながら他の女性に声をかけてしまった。そして。
「あの人どうしたいんだろうね」
 と、述懐。良子は、基本アブない人には靡く可能性はない、それだけは言える。
「ところでさ」
 良子がいつの間にか私の料理を手に取って、テーブルに乗せている。綺麗な真っ白い皿でちゃんと布巾で拭いている、それに私は言葉も載せて返す。
「わかっているよ。良子は今日にでも行きたいんでしょ?」
「わかっているんだね。じゃあ、お酒でも飲まない?」
「やだよ。だって、私は酔ったら何したか覚えていないんだから。そのときに文句を言ったんでしょ? そんな傷を与えるようなことはしたくないよ」
 そうなんだけどね、と前置きを言って良子ははにかんだ。何かを考えているときの顔だ。ただ、私は何もしないでもいいように言われているのだから、特に何も抵抗をしない。そしてその姿を見て、良子も特に言うこともなく、テーブル前の椅子に座る。綺麗に磨いているから、面白いほど滑るのだ。ここはどこかの展示場ではないのか、と思うほど綺麗好きが招いたある悲劇、とでも名打ったらどこかに入賞でもしそうだ。
 とりあえず、私はこの家に来てどれくらい経っているのかを覚えてはない。ただ、楽しいことは続いているような気がする。楽しいことが続くことはとても良いものだと思う。当たり前のことだが。好きなものに触れているときほど幸せなことはない。まぁ、人に寄るのだろうけれど。
 そして、二人で無言になって、悪くない沈黙の中で食事を摂る。美味しいと感じる感情は未だ変わらない。それが嬉しくて。楽しいのだということにも気づく。
「あれから、どれくらい経ったのかな。でも、あの人、今どこで何しているんだろうな」
 私の呟きに特に意味はないと思ったのか、良子は私の頭を叩く。うるさいとでも言っているのだろうか。私はごめんと苦笑い。そして無言の食事を再開する。
 楽しいな。嬉しいな。面白いな。幸せだな。
 でも。
 寂しいな。

 桜はよく、私について質問をするのだ。何があったのかから始まって、何かについて答えてほしいなどという風に。ただ私はそれに簡単に答えを言うのではなく、なるべく自分から考えさせるように答えさせている。でないと自分の答えが何だったのかがわからないからだ。自分の答えに自信を持てるような答え方じゃなきゃいけないのだ。
 基本的にそれが頭の良い答えになるような気がしている私でもある。きっとこんな考えは他にはいないのではないのかと、時々思うのだ。私はいつものように答えを考えさせる。きっとこれが正しいと信じながら。
 話は変わるが、信念というものは時々答えの変わるものだと私は思っている。いつも同じ答えなのだと、変なのだが、それでも同じようなものを持っているのはあながち間違いのないものだと思っているのが少し笑えるのだ。……笑い出したのはこんなことを考え始めたからだ。
 いつも私のような変わった人間が答えなんかを考え始めるのはいつものようなことだと信じている。何をしているのかがわからないけれどいつものことをしているのはどうしてなのだろうか。私は笑っている。故に私のことなんだと。こんな真理を持ってしまったときのようないつものことなんだと知っている。
 ……私は何をしているのだろうか。わからないが答えなんて求めてはいけないのだと気が付いたときもあった。それでも続いていくことに淋しさを持っているのかな。淋しくて涙を流していたときから、いつものように世界を涙で包み尽くした。笑っても泣いても変わらないんだと、信じていたからいつものように、いつものように。笑ってほしいのだと、谷崎によく言われた。谷崎はまだ、私が独りでおままごとをしていたら砂場で遊んでいたことを指をさして笑ってくれた。それが今でも癇癪にさわる。だけど、独りから脱出させてくれた。その感謝から(ただ、当時は疎ましがったが)一緒に居るようになった。
 私はその頃は元々人付き合いの下手くそだったけど、それでも一生懸命に教えてくれた。谷崎はひたすらに厳しく優しかった。人付き合いの大切さを何度も繰り返し教えてくれた。ただ単純に恋心を態度で教えるようなそんな感じなのかもしれない。それでも嬉しさを信じているのだから、これからは一緒にいてあげようと、少しずつ思っていった。
 時々のように谷崎は私の香りを感じるかのように香水などもくれた。なんのために? と思いながら、綺麗な宝石を持ってしまったとき、これが婚約というもの? と思いながら、尋ねたら、爆笑された。
 お前に素直に婚約なんてしねーよ。でも、そんな気分があるんなら、まずは今までを続けようぜ。
 好きになったわけじゃない。元々の鈍感さがこんなにも発揮されるんだろうとは思わなかったのだ。今でも桜に馬鹿にされるのだから、私の鈍感はありすぎているのだろう。こんなにも一緒に居るのだから、当たり前のようだと信じている状況を当たり前に思えることが今でも楽しく思えているのだから。ひたすらに自分の答えを求めていると、隣に必ず、谷崎がいた。そして今は桜がいる。谷崎はどこかに旅をしに行った。そしてその直前に桜と出逢った。運命的な出会いだったって今でも思っている。
 いつしか、三人で暮らしたいって信じている。だけど、それだけサイクリングされる永遠なる環はいつ止まるのだろう。今の私にはわからない。だけど。
 自分の答えを信じているのが、私だけなのだと今でも思っている。

「桜」
 私は両親に呼ばれた。どちらの親に言われたのかがわからない。声が被さっているのか、それともノイズの入ったような声だったからかはわからないけれど、私の機嫌は悪くなる。
 無視して私は目の前にある玩具を弄ぶ。一緒に隣にいてくれた、くまのぬいぐるみに笑いかける。一緒に隣に居てくれる、うさぎのぬいぐるみに声をかける。それがまるで自分が両親のようなが気がした。
「桜。行くわよ。今日は久しぶりの外食よ。焼肉食べたいって桜が言ったでしょ?」
 途端、私の聴覚に覚えのある声が流れ始める。その声は両親ではなく、ぬいぐるみから聞こえたような気がした。そしてじっとしていると、私は軽く持たれて連れていかれる。嫌だよという態度は示してはいけない。それは自分を折るからだ。それだけはしてはいけないんだと何度も言い聞かせる。だから我慢する。一生懸命に我慢する。両親が嫌で一緒に居るのも嫌なのは子供心に嫌だって思うことを去れたからでもないのに。こんな自分が嫌だって思うこともあるが、仕方ないのだ。
「どうしたの? 涙が出てるよ?」
 気付いた。私が自分に言い聞かせていた。そしてこれからも気付く。自分が自分に問いかけるかのように呟いているのだ。焼肉を食べに行ってしまいたいという願望を持って、今から行く場所に連れていかれるのだ。私は嫌だと何度も思ってしまった。だから嫌なのだ。綺麗事なんて信じない。好きな自分を求めてしまったのはなぜだろう。今だからこそ思えるのだと、何度も思ってしまった。今だからこそ失いたくないものがあるのだと、思ってしまった。それは偶然なのか、必然なのか。幼い私はわからなかった。
 好きなことをしながら両親に連れていかれている自分。玩具は取り上げられることはなかったけど、それでも今では面白くないと思っても、当時は楽しかったのだ。嬉しくて仕方なかったのだ。何故、こんなにも面白いものがあるのかなと思っても、嬉しくなかった。互い違いに被る思いと答えはいつも笑わせてくれる。こんな子供を愛してくれた両親が嫌いだった。
 私のことを放っておいてよ。私なんて大したことのない人なのよ? 子供なんだから大目に見てよ。
「大丈夫だよ、桜。いつもあなたを大切に、愛しているのよ」
 本当に虫唾が走る。本当に喜んでいる。私の本当の気持ちはどっち? それでも失わなかったのはそれだけ楽しかったからだろうか。でも見失ってしまった。楽しくても笑えていない。気持ちはどこに行ってしまったのかもわからないのだから。
 私の感情に火を点したのは誰? 私の答えに異を唱えたのは誰? それでも私はわからずに運命の渦中にいるのだから。思い出してしまった、嘘と偽りの言葉。
「愛している」
 嫌いだった。嫌になるのも無理はないのかもしれないのだから。いつもそんな言葉で私を騙しているのがわかっているからせせら笑った。だけど、それでも。通用しないときもあった。それが悔しくて。
 そんなことを考えていたら。
 車の中から外を見た。車の中にいることに気が付かなかった。そして。
「――施設にいれようか」「だけど――知らないでしょ」
 私は喜ぶ。
 やっぱりじゃないか。私を愛しているんならそんな言葉は出ないでしょ?
 一人で玩具を弄りながら、これといつまでも一緒にいられるんなら私はどこにでも行く。憎き両親に仇を返すため。でも。
 何を意味して両親を嫌になったのかの具体的な理由はどこにいったのだろうか。
 そのときの私はわかってはいなかったが、今では、わかっているような、だけどわかっていないのだから。嬉しくてもすぐに包み隠さず教えてほしいのだと。
 神に祈った。

「ほらーー。行くよーー」
 私のことを呼んでいるのは誰だろうと思いながら眠い目をこすりながら掛布団を取ると、そこにはどこかに行こうとしている良子の姿があった。綺麗な向日葵の絵がプリントされているシャツを着て私のことを呼んでいるのだろうか。
「私はまだ豚のぶーちゃんと遊んでいるから、寝ます」
「起きて。早く。じゃないと、夕食の豚肉を取りに行かないよ?」
「豚肉にされたぶーちゃんを救いに異世界に行ってこい!」
「何の話よ。それより、いいから」
 なにか、会話が微妙にかみ合わないのは気のせいだろうか。それを知るために、よく見れば、誰か玄関先にいることに気付く。綺麗な姿をしていた向日葵の絵が揺れ動く。その後ろに。
「お久しぶり。さくらちゃん。一緒に踊ったときのことを覚えている?」
「あーー! 記憶から抹消していたのに!」
「え?」
 そこには私がまだダンサーとして職業を賄っていた頃に共に歌っていた美姫がいた。綺麗に輝くアクセサリーが胸元でキラキラ。私の瞳に懐かしい、思い出がたくさんあった。そして、施設の中でも一緒にいた、美姫だということに覚えていたことを感動している私がいた。
「まだ、記憶あるの? だったらごめんね。今日はさ、私の曲が発売されるの。それのゲストでライブハウスに来てくれない?」
 私のダンステクはあまりにも惨めでミジンコ並みに使えないからということを知っての言葉なのだろうか。
「聞こえているよ」
「私の心の声を聴くなんてあんたなかなかやるわね。覚悟しろ!」
「知らんがな。でも、良子さん。一緒に行きたいけど、今は二人のほうが良いと思うの。それと、一緒に暮らしている人にこんなことを言うんだねぇ。いつの間にかお母さん涙出そう」
「うるさい! 私はハンバーグケーキを食べて成長するんだ。いつだって、君の味方だから」
「起きろ!」
 いひゃい! と硬球ボールを投げられる。いつの間に野球をしていたんだ? と思ったがあまり思わず、あまりもの痛みに目がカッと開く。
「起きましゅた。ごめんでしゅ」
「はいはい。さくらちゃん。行きましょっか」
「いつものようだね。それと」
「それと?」
「おはよう」
「もう一球投げるよ?」
「ごめんでしゅ」
 からから笑いながら、美姫が部屋に入る。私も敷布団の上に座る。ただ、眠いのは続いているので意識半分、睡眠半分の状態。
「一緒に住んでいる人はとてもやさしいんだね。こんなに穏やかなさくらちゃん見るの久しぶりだな」
 さくらちゃんと呼ぶのは美姫以外いない。私のことをいつも信じているのがこの美姫という人物。嬉しくて、たまに暴走するのは私といるときだけ。そんなにも谷崎美紀は結婚してしばらく経つ。私の裏側を知る人でもあるのであまり心を構えなくてもいい。心の綺麗好きと言えばいいのだろうか、私の心境をすぐに理解してくれる理解者として大切な人である。
 美姫のことを詳しく言い出すと、時がいくらあっても足りないので、私は思い出すことをここまでにする。
「それでさ、私思うんだけど」
「どうしたの?」
 綺麗好きな良子のためか、私のことを放ってくれている美姫に感謝。
「異世界への扉はどうしたら開けるの?」
 わからないよ、とでも言いたげな瞳はちゃんと伝わっているよう。顔をあげて、私はいつものように転がってしまう。いつものようにということを何度も思ってしまうのはあながち間違いではないのだろう。きっと、これからもこんな日々が続く。いつものようなことが楽しくて、哀しみなんてどこにもなくて。ただ、私はいつものようにという言葉を連呼している自分に気付く。どうしてなの? と答えてしまう自分がどこか情けなく思えてきて仕方ない。
 いつも私は人に頼ってばっかり。いつも私は人を頼ってばっかり。だけど、それだけ収穫はあったと思うんだと思う。ひとりでに可能性を考えているのなら、それだけ、楽しいこともいっぱいあるのではなのかとも思う。甘えるのは時々でいい。そして美姫にも甘えて、厳しく良子に甘えて。こんな難しいことが楽しくて。それがずっと、ずっと続けばいい。そう思っていたのに。
「私はとりあえず、そのイセカイとかは知らないけど、またダンスをしてくれないの?」
 異世界のことを言っても仕方ないし、元々都市伝説のようなもので、いつか私は行ってしまいたいと考えていたのだ。どこにでも転がっているのは何でもない障害物。いつも楽しそうに笑っているその表情。いつも、いつか、いつまでも。私たちは一緒に遊んで暮らせることを願った世界を。ずっと永久に永遠に。追い求めているのが私たちでもあるから。
 ダンスのこともいずれは話したい。きっと何度も思い出の中にあった偶像を見ているのは私だけのような気もする。ただ、一緒に暮らしているのなら、楽しく過ごしていきたいと思っても良いと思っている。どこにでも言葉は残っている。その残滓を歓び満たして、いずれは、一緒に踊るようなことを思い出したくて。
 二人きりでいるのは面白くないけど、だけど、それでも楽しく思えることが今の私に残されているものなのかもしれない。ずっと一緒にっていう過去じゃないから。
 友達ってこんなにも大切なんだなと思っても、無理はないのだろう。二人がいるだけで、こんなにも考えてしまうなんて。
「ねぇ、りょうちゃん。きっとね、私は綺麗な華やかな踊りをしたくて、さくらちゃんに声をかけたの。あのとき、いつだったかな? そのときのさくらちゃんの表情って言ったらもう、何も言えなかった。だって、あんなに暗くて全てに絶望していたのは何だったのってぐらいだったから」
「そんなこと言わないでよ。でも事実なのは認めるけど」
「認めるんだぁ」
 良子はやっぱりのんびり屋さんでした。とりあえず、私はもしかしたら、旅路の途中にこの美姫を連れて行けばいいのでないのかと思ってしまったりする。
「ねぇ、美姫。どうせなら、一緒に旅に行かない?」
「なんのこと? 私はただ、ダンスのお願いに来ただけなのに」
「その途中で勉強になることがたくさんあると思うんだ。例えば木々の葉っぱのような踊りの見つけ方とか、ゆったりとしている雲行きの踊りに勉強になるとか」
「うーん、別に悪くないけど。でもそんな森林なら旅なんて言わないで、森林浴をしに行く、ってことじゃない?」
「私達が行こうとしている場所はちょっと不思議な場所でね」
 そして私は体を起こす。ようやく身体が思い出してくれたようだ。
「そこには魔法が使える世界なのよ」

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posted by 紅空橙輝 at 20:14| Comment(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月31日

人としての望みなんていらん! だが私は笑いたいのだと今でも星々が云々。だけどねぇ以下略。

 ふっふっふ。
「どうしたの?」
 私のことを知っている人がいるとするのならということです!
「ま、まさか!」
 その場傘。
「何を言っている! 貴様、許さんぞ!」
 時々そんな言葉がはやるんだって。
「何を言っている、流行病を知っているだと?」
 うるせぃ。我のことを思い出したのはここはドイツだ。
「意味わかりません」
 解ってくれませんか? なら三十円ほど出しますので。
「意味わかりません」
 じゃあ、始めましょっかね。
「まてぇい!」

 とりあえず。
「うん。僕は何も聞いてないの」
 いやいや、そんなことを聞いた覚えなんて何もないんだよ?
「それは大きいなぁ。ビックになるちゃんだね」
 いや、スモールの方がきっとあなたには似合うのよ。
「待てまた。私の意見を聞いてくれないと、お星さまに突撃よ?」
 ふっふっふ。
「またその笑いを」
 だって、いつも笑っていることがあの人には嬉しいって言ってくれたじゃない。
「なによ?」
 おいらはいつもおじいさんを追いかけていたの。支柱に克!
「漢字間違いはいけないぞ!」
 おいらはいつもおばあさんを追いかけていたもの。術中にはまったな。貴様ぁ!
「私は、わたしはぁ!」
 いつも意味踏めないことはわかるけど、きっとねお星さまが輝いているのよ。だからあなたにも伝わると信じていたことが今でも覚えているのよ。
「だって、それが嬉しくて。いつものように楽しんでいただければという言葉がいつものように続けばいつものようになれるのに」
 いつもいつもいつもうるさい!
「涙を流すのは今でも思い出せるんです。だって、だじぇを知っているんだから」
 きっとね、お星さまがあそこから天使として見渡しているの。それだけはわかってあげて。
「嫌だよ。お姉さんが僕のポケットから現れたのが今でも嬉しいんだから。だけど、だけど」
 いつものように笑ってください。いつものように微笑んでください。
「そんなことは知らない間に終わっている。それが私には耐えられない。だけど」
 ひっそりとした感情はいつも涙を流すことに一生懸命。
「私の答えを零したその口は今でも覚えている」
 どこか遠くに行きたいんだと知っているから。
「私のことを覚えていてほしいから。だから、今から始まる物語は」
 フィクションです。その他人生に関ることはこれkらはじまるのです。
「きっとね、と言ってしまった時のようなことを今でも覚えている」
 そう信じて笑ってしまった時を覚えているのなら。
「今からでも遅くない。これから行けば間に合う」
 そんな気がしてならないのだ――。
「私は信じているから」
 だから。
「ありがとう樋場させてしまった私を許してください」
 あなたを亡き者にしてしまった、そのことを許してください。
「いつも、いつも」
 だじぇ。その言葉を思い出したくて、これからも始まっている。
「そのことが、いつものように反響する」
 その声をいつしか聞いた気がして。笑ってるような表情を。
「いつまでも続いてほしい」
 そう信じている。

 きっとね、あなたが知っているのは友達なの。
「いきなりどうした」
 感情が昂るのはいつものことよ。
「知らんがない」
 うっふっふと笑って見せてよ。
「嫌だもんね。僕はトイレットペーパーを握っている少年だもんねぇだ」
 良かった良かった。トイレに行くんだね。僕もついていくよ。
「ダメだ出目だ。出所はトイレットに行くことだ!」
 まるで意味わかりません。
「全く、だから日本人はダメなのよ」
 何の話!?
「いやいや、知る限りのシルフェイドを知っているわけないじゃない。だからなのよ」
 いやいや、ログハウスには誰にも聞こえない恐ろしい病院があるのよ。そこからはお化けが出てキャー!
「一人で何昂ってんのよ」
 だって、だってぇ!
「あなたが知っている事実は私にもわからない。その事実があなたを地獄に突き落とし、師へと導いた絵クリスと呼ばれたひとがそこにはいました。だって、知っているからと言いながら」
 それは著作権侵害問題にならない?
「それでも絵く知るは言いました」
 名前がおかしいのは最早デフォですね。
「私が畏怖する天使様ですと」
 それもいろんな意味で危ないでしょ。
「いつも笑っているあの人は今どこにいるのでしょうか。今でも素晴らしい世界を創るために、頑張って魔法を操って、コンピューターを使って、狭い背境の中で一生懸命頑張っています」
 それはただのひきこもりでしょ?
「だけど、覚えている。いつも言っていたあの言葉を今でも思い出します」
 一人でいつも笑っている不気味な姿は、月の輝きに打ち消されました。
「今でも対抗呪文を抱いている。そして笑った」
 いつもその輝きは、忘れられない。
「そして、これからも、失わない事実に乾杯をしたいと」
 つよく、そう願っている。
「それが大変な事実だから。いつものように、いつものように」
 笑っている?
「泣いている?」
 私は覚えている?
「だけど泣いている」
 覚えてない事実はどこにもないけれど。
「どうにでもなってっていう、答えはもうどこにもない」
 いつしか、忘れ去られた時が来た。
「その時私は何をしていたんだろう」
 私は覚えている。だけど、どうしようもない苦悩と余るグールが襲う。
「それはいつも何かをしていた。それはいつも笑っていた。教会の中で私は一人苦悩する」
 そして答えは出なかった。
「天使様は微笑んだ。私を連れ去っていくのですね、と私は思っている」
 嬉しくて。哀しくて。憐憫と哀楽の感情は共に動かしている。それでも笑っていてほしい。
「だから、共に行きたい世界の中で、天使様とお星さまにお願いをする」
 どうか、私を癒してくれませんか? と。
「天使様は微笑んだ」
 良いわよ。なら、一緒にこの腕を抱かないといけないんだと。
「私は笑った。いつものように笑えた。どこか遠い地平線を見て感動したあの時のことを今でも覚えている」
 そして、私は忘れていく。この現世のことおw忘れていく。
「いつも、何かを失っていることにも気づいている。だから、もう、終わりなんだと」
 いつか、私が夢見ていた世界に私は行くだけ。
「さぁ、行きましょう」
 私は天使に手を引かれて。
「共に空を飛んだ」

 さてと、涙を流したことだし。
「ましーー」
 だしでしょ? せめて面白おかしく存在意義を示しなさい。
「ましーー」
 なんでそんなことを言うの? わすいは和水町だよ?
「ましーー」
 ひとりで話しているのが馬鹿らしくなるからやめなさい!
「ましーー」
 えぇ、ちがうのぉ?
「ましーー」
 ちょっと、いつもこの格好だったらおっかしいでしょ?!
「ましーー」
 いつものように答えてよ!
「マシなもんを寄こしな!」
 あ、答えた。
「ましーー」
 何が言いたいのよ!
「ましーー」
 じゃあ、勝手に始めよ。いつものようにトイレットペーパーを、
「ましーー」
 していたらいつものように、涙を流している少年がいることに気が付きました。
「私はいつもましーーと呼ばれる存在。十回ぐらい言ったから良いんじゃね?」
 涙を流すのもそこまで所!
「よ?」
 好いや違うんだ。私は好々爺のおっさんに真実を継げたのよ。恐ろしいほどまでに顔を青褪めたおじいさん。
「好々爺は気持ち悪いと誰もが言っていたんだから。私はいつものようにましーーを言ううだけ」
 うるせぃ! 私は自分のことを信じている。恐ろしいほどまでに答えを知っているトイレットペーパーを知っているから。
「涙を流すのはましーーのせい。私は一人夜空を眺める」
 星が綺麗だった。
「それでは歌っていただきましょう」
 ロリヰタで「君が星になった日」
「ちょっと待て」
 どうした?
「ましーーを言わせてくれ」
 なんで? (含み笑いをしていると思われる)
「なんで、それを言う」
 何かあったのか!
「ましーー!」
 著作権なんて……信じない。だから行くのさ!
「ましーー!」
 夜空が綺麗だったこと今でも覚えているから。
「そして、最後の映画はここで終わる」
 いつものように世界の中で遊んでいた少年がもう笑うことがないんだと。
「それが全てだったんだ」
 私は涙を流す。
「それは全てを知っていた。そしてこれからもずっと」
 過ぎ去った季節は終わらない。
「それだけ、自然の偉大さに勝てないのだと」
 そう信じたから。
「妖しげな月の光が突き刺す、教会の中で」
 私は一人、神に祈りを捧げていた。

 さてと、境界線でも弾きますか。
「えぇ~~、違うのぉ?」
 ダメ?
「ダメダメだったよ」
 えぇ~~、違うのぉ?
「ダメだよ。トイレットペーパーを信じているからねぇ」
 じゃあ、私はどうすればいいのよぉ!
「丸でも書けば」
 どういう意味ぃ。ずるいーー。
「イミフなことはいつもそうさ」
 だってだじぇだよ?
「だじぇは最強という名前を俺が知っています」
 うそぉ! ホント?
「ウソツキなんこの世にはいません!」
 そうなの?
「なのだよ。今回ばかりは魂を引っこ抜かければなるまい」
 難しいこと言いますねぇ。
「どこがだ! 魂はカエサルの者なんだぞ!」
 もの?
「もの」
 というわけなんですね?!
「うん、そういうわけなんですぅ」
 まさか、眞坂!
「世界の中で遊び通していた人物を当てろって、あのことだったんですね」
 そうだ。君のことを知っている人は言ってしまった。
「三分間待ってやると」
 むスカ様! わたしはあなたを信じません! 表記が違う殻ってそんなことは言ってはダメなんだ。
「時々のように思い出します。記憶の中に眠っている、一人の少女を」
 きっとね、神様も悪戯したいんだよ。一生懸命頑張っている人にジンジャーエルを求めているってこと。
「そんなの全然信じていないから」
 だけどね、笑う門には馬鹿来る。そういうことよ。
「いつものようにそう信じていいのよ?」
 だけど、知っていることはそこで終わる、スカイアリーナの居場所を探せ。
「それが答えだ」
 きっとこれからもそれが続く。
「そしていつの日か、魂を引っこ抜くことができれば」
 その時が最後の日になる。
「新しい世界の前触れで。私は歌いたい」
 一夏の思い出と共に輝く。
「そんな日々が続くことを信じて」
 謳いたいと思います。聞いてください。
「環八で「青い炎の揺らめき」」
 ……誰?!

 おほほのほ。
「どうしたぁ!」
 忘れ去られし思い出の欠片。それが私の真実よ。
「知らんがな。それと含みらワイトとはなんだ!」
 そんなことは言ってないよ? 普通に。
「いや、ノれよ」
 えぇ、ちがうのぉ?
「私はいつだってやればできるんだぜ」
 女の子と男の子の秘め事!
「だめだ! 著作権が危ない。一人で旅立つのはよろしくないんだ!」
 それでもこの言葉を流行語大賞に送りたくて、という作品を描いた、西村さんに来てもらいましょう。
「はい、どーも、西村デース(CV.南○吉野)。いつかお世話になりましたぁ!」
 誰?!
「えぇ、せっかく私がWAONの広報をやっているのに」
 いや、それは大丈夫じゃないでしょ。
「それでも真実を知りたくてここまでやって来たんです。いずれ知るであろう、あの時のことを」
 それはつまり、エムラクールですね?
「全ての終焉に向かって、私はギセラとともに戦う」
 もう彼女には彼の声しか聞こえない――。
「何もかもを失ってしまったのは大切何か。それでもいつでも世界の終焉に向けて旅立ったサテュロスに私は言ってしまった」
 彼に全てを託して、言ってしまった。
「世界の覇権を握っているのはニッサでもジェイスでもなく、あの御方ウギンであると」
 そしてニコルボーラスに。
「ちょっと待って」
 どうしたの?
「なんで、そんな世界的有名なカードゲームばっかの固有名詞が?」
 まぁまぁ、世界は広いんだよ。それぐらいは許してやろうぜ。
「そうだね。それが本当のファンタジーと呼ばれるものなんだから」
 いつだって、幻想という言葉を使えばいいと信じている。
「私はいつしかカードゲームを作り出してしまったあの御方を今でも尊敬している」
 そして私のことを知っているのもただ一人、彼しかいなかった。
「それが当たり前。それが全て。そしてこれからも続くであろう、そんな言葉を残して」
 私は未来へと歩んでいく。
「その背中に後悔という言葉なく」
 前には尊い世界が広がっていく。
「あぁ、なんて平和が広がっているのだろう」
 その絶景の美しさに涙して。
「私は前へと歩んでいく」

 あれ~~?
「どうしたの? 何か鞄でも落ちていた?」
 あら~~?
「もう、知らないのね。私のこと覚えている?」
 うっふっふ。
「ちがうのぉ?」
 盲点スキル発動!
「リバースカードダス」
 とりあえず、単語を繰り返すのは止めましょう。
「どうしてなのよ!」
 それで、かばんは落ちていないのかい?
「どこにそのかばんが落ちているのよ?」
 かばんを漢字で書くとどうなるでしょう?
「疑問形ばっかり使うのは止めましょう」
 えぇ、ちがうのぉ?
「だから、疑問文という基本形は将棋では勝負手と言います。その時、僕の予想とイデアの販促が使われます。そして、これからの毎日に必須なアミノ酸が手に入ります。それが私の最後の分なのです」
 いや、突然、専門用語を言われても困りますね。私はロジックとかも好きじゃないんですよ。それにリーダビリティなども、ちょっとね。
「そこで、あなたには池が似合うかと思います。且つて、トイレットペーパーを知っていた人が思いついたぁーー、僕のことでエス。シーには行けないことは今でも思っています」
 そこで、母校からは、突然のように学校に通うことをお勧めし舞うs。この漢字の意味を知りたければ、広辞苑を開くことね。
「まさかね。商業化された、ひぐらしはなく頃にを知っている彼女のことをトラワレテしまった←この意味わかる人挙手!」
 ノシ。
「はい、正解は?」
 3xです。
「やってらんねぇよ!」
 どうしたの?
「ファ〇タ、ブルーハワイ味新発売!」
 それでも僕は求め続ける。いつしか本当の味を知りたければ、私の門をたたきなさい。
「紺紺。赤赤。翠翠」
 どういう叩き方をしているの?
「こんこん、あかあか、すいすい」
 ひらがなを使えばいいんじゃないの。そうやって、だじぇの存在を必要とする人を見つけないといけないでしょ?
「まぁ、あながち町がじゃないなんだろうね」
 そして私は旅立つ。
「一人の街がこんなにも寂しいなんて思わなかったけど」
 あなたの門をたたいた後、虚しさが襲ったから。
「今からでも遅くはない」
 これから、私は遠い地平線を辿っていく。
「もう、その背中に」
 後悔はないから――。
「そして、私は」
 笑いながら。
「空を見上げた」

 いつも言っているよね?
「何を?」
 だじぇに潜む闇だよ。
「何それ」
 えぇ~~違うのぉ?
「うふふ。値のターンを知らないんでしょ? 私は笑いながら空を見上げていたんだ!」
 おほほ。私のことも知らないなんて、いつまでも空を見るからだよ。値なんて十六だろう? それがどうした?!
「ごめんなさい! 私がいつも畏怖しているおじいさんとグリットを創っていたから!」
 そんなことは許さんぞぉ! おじいさんは笑いながら呟くんだ。
「積立金をいつまでも摘むと、もれなく洗剤がプレゼントされるということを!」
 そうかぁ。そうだよなぁ。知っているよ。おじいさんのだじぇを。
「知りたければついてこい」
 サーテンリー。
「私が降り立った値は、おじいさんでした」
 サーテンリー。
「そこでジェンガをしました」
 サーテンリー。
「そして大哲人は言いました」
 俺についてこい。
「サーテンリー」
 一緒に遊びましょ!
「うん!」
 ここで終わったら、笑いが採れるんだろうなあ。
「いやいや、インド語派難しいよ?」
 派?
「知らんがな。おじいさんはサーテンリーが大好きなんだよ」
 さぁ読者の皆さん? サーテンリーはどんな言葉か、わかるかい?
「はい!」
 はい、芳野くん!
「おじいさんです!」
 正解! 君は地獄を見たんだね?
「はい、先生!」
 答えは、明日になれば届くと信じていた希望と絶望の狭間にある世界観だけに笑えない世界の中で一生懸命頑張っているおじいさんとおばあさんに一緒に鳴れればいいねと言ったお姉さんとお兄さんが笑ったその時知った唐揚げの味が今でもおいしいとあの思い出を思い出してしまったことを悔やんで空を見上げたことをいつまでも踊りながらダンスステップを踏むことに感情を揺らしてしまったことに後悔と懺悔の文字を「うるさーい!」
「どうしたぁ!」
 何が言いたいの? (おそらく、おじいさんだと思われる)
「先生はつまり、答えがないんでしょ?」
 そうだ。中村さんに謝りなさい。
「サーテンリー」
 それで?
「あの僕、好きな人ができたんです。綺麗なおじいさんで」
 そのおじいさんはどんな人?
「それでですね。禁断の恋だとは思っています」
 それでおじいさんはどんな人?
「だけど諦めきれるわけがないんです」
 それなんだけどね、おじいさんって人はどんな人かなぁって気になるの。
「だから僕は言ってやりました。答えてしまいました」
 おじいさんってどんな人ですか? と。
「あなたの答えと僕の答えが違うように見えて同じだということに、僕は感動しました」
 おじいさんは知っているよね? あの人の輝きを今でも知っているのは、もうどこにもいないことを。
「知っているの。本当に涙を流しながら、いつものように笑いながら、一緒に遊ぼっておじいさんはあの人に言っているの」
 どこでも一緒に居られるよ? どこにでもいられるよ? だけどね。
「もう覚えているんだよね。一緒に居られることがもう無理なんだよねって。おじいさんはよく笑っていたの」
 私と僕との約束をおじいさんは忘れていった。
「遠い未来に帰って行ったの。私はそれを見ることしかできなかった。僕はそれを聴くことしかできなかった」
 いつものように私たちは待っています。
「いつか帰ってくる、そんなおじいさんを」
 ずっと二人で待ってます。
「ずっとずっと――」

※こちらはトルセルで販売している「人としての望みなんていらん! だが私は笑いたいのだと今でも星々が云々。だけどねぇ以下略」http://torusell.com/go/25590です。もし楽しくて、他の作品も読んでみたいのでしたら、リンクを辿ってみてご購入されてはいかがでしょうか。
posted by 紅空橙輝 at 16:20| Comment(0) | 物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする